単独・無酸素登頂に挑み続ける28歳の今
Guest
栗城史多 登山家
ワタミグループ代表の渡邉美樹をホストに、さまざまな分野のキーパーソンと語り合う対談連載「オークントーク」。今回のゲストは、登頂する姿を自ら撮影しながらのインターネット生中継の実現や、エヴェレストの単独・無酸素登頂に挑んでいる登山家の栗城史多さんです。
Restaurant & American Bar「T.G.I.フライデーズ」六本木店にて(写真:冨田里美)
失敗をさらけ出すことで誰かの気づきになれれば
渡邉 栗城さんは大学で山岳部に入っていたと伺いました。それで山にのめり込んでいった感じですか?
栗城 最初はそうでもなかったんです。山のすごさに目覚めたのは、先輩と2人で冬山にアタックしたときです。途中で何度も諦めそうになって。でも、最終地点に到着したとき、ボロボロと泣いている自分がいました。今までの自分は、やりたいことをみつけても、いろんなできない理由を言い訳にしていた。けれど、冬山というのはそれ以前に生きて帰るために必死になるしかないんですね。〝これだ〟と思いました。
渡邉 栗城さんの著書『NO LIMIT』を読みましてね。一つひとつの言葉がとても胸に響きました。まったくその通りという感じで。私がいろんな経験を通して理解してきたことと同様のことを、すでにこの若者はもう知っているのかと。年齢など関係なく、山に向き合うことでこういう言葉が出てくるんでしょうね。山にはどのぐらいにペースで行かれていますか?
栗城 半年に1度のペースで遠征をしています。夢はエヴェレストの頂上でインターネット生中継をすることです。この生中継のために、僕が衛星用機材(約4kg)を担いで登っています。頂上に着く瞬間というのをみんなで共有できればいいな、と思って始めました。
一般的には山男に泣き言は許されないというのがあると思うんですが、弱いところも全部さらけ出すことで、挑戦することの大切さを伝えられたらと。渡邉 私はシンポジウムなどでもよく言っていることなんですが、「物事を達成よることより仲間とともに作ってきた過程が大切」なんですよね。ここに気がつく人ってなかなかいないんです。栗城さんはすごいそのことに気づかれている。
栗城 エヴェレストは最後のゴールではないと思っているんです。山に登っていて危険だなと思うのは、夢を叶えた瞬間なのかなって。ゴールへ向かっていくことは、比較的簡単にできることなのかなと思うんですが、叶った瞬間からどうするのかがもしかしたら一番大切なんじゃないかと。
渡邉 モノとか現象に最終目標を置くんじゃなくて、もっと内面的なところにゴールを持っていると終わりがない。ずっと成長できますよね。
栗城 僕は人の成長というのが好きなんです。今の若い人って、いかにリスクを減らして成功するかというのを考えている人が多い気がするんです。僕はそれはどうなのかなぁと。失敗を経て成長してこそ成功が輝く。大事なのはそこなんじゃないかと。
渡邉 僕も山に登るのがすごく好きなんです。もし、若いときにこの本を読んだらエヴェレストに行っていたかもしれません(笑)
栗城 エヴェレストの単独・無酸素は2回失敗しています。2回も失敗すると登山界などからは厳しいことも言われたりします。でも失敗したことは、正直に出そう、と。下山するという判断は実は一番大変で。お金も集めて、仲間の思いも背負っている。けれど、生きて帰ればまたチャレンジできる。執着しないことも必要だとわかりました。
渡邉 自分を俯瞰できることが重要ですよね。それは、ビジネスでも人生でもそう。栗城さんが、そうやって失敗を見せることが若い世代から共感を呼んでいるんでしょうね。
栗城 僕の尊敬する人の言葉があるんですが、「成功の反対は失敗ではなく、何もしないこと」だと。
渡邉 みんなそれぞれの山をみつけることですよね。登ることよりもプロセス。自分の山をみつけて登り始めてみる。最初の一歩が肝心ですね。

