原恵一監督 インタビュー
現代社会に蘇った河童の子ども“クゥ”と、主人公の少年・康一との交流を通して、人間模様や環境問題、いじめ、マスコミの加熱報道などを浮き彫りにしたアニメ映画『河童のクゥと夏休み』。その原作に出会ってからおよそ20年もの間、作品化を願い続け、昨年夏ついに完成させたのが、原恵一監督だ。
「初めて原作を読んだ時に、『ここには何か豊かなものがあるなぁ』と思ったんです。でも、その頃は20年も前なんで、どんな作品にするか、まだ考えもつかなかったんですが。とにかく仕事をやっていく上で、これを目標にしようと。『これを作れたら、あとはもうどうでもいいや』っていう気分でしたね。まぁ実際はそうもいかないですけどね。終わってもまだ人生続く。誤算でした(笑)」
『河童のクゥと夏休み』はアニメ映画でありながら、大人にも子どもにも、それぞれの心に感動と、小さな爪痕を残すような作品。実際に、クゥの父親が殺されるシーンにも、賛否両論あったとか。でも、“命”や“魂”といった、人間にとって大切な部分を、オブラートに包みすぎることなく伝えたかったという。
「命とか魂というのは、すごく意識してます。魂がなかったら、たとえば心臓が止まったら、その時点でその人はなかったことになるじゃないですか。魂はあると思いたいですよ。目に見えないものは、もちろん目に見えない。だったら、イメージすればいいんですよ、『きっとある』って。でも、子どもの頃ってよく親から言われましたよね。『嘘をついたら舌を抜かれる』とか。それを言われるとその時は反発するんだけど、何か悪いことをしたときに、心の中で謝ってましたね、『閻魔様、今のなし!(笑)』って」
気取ることなく、飄々と語る原さん。でもその姿からは、20年もの間、作品に向き合い、想いを貫いてきた人ならではの芯の強さが、ひしひしと感じられる。自身が感じたこと、思ったこと、そういった“目に見えないもの”を、物語として“目に見えるもの”に変えていく。原監督は、映画という手法で、“目には見えないけれど、もっとも大切なもの”を表現することのできる存在なのかもしれない。
「伝えたいんですよね、自分が感動したことを。ほかの人にも味わってほしい。アニメを作ることでいつも意識しているのは、作品を作る過程になると、わかりやすいものを作ろうとしてしまう人ってけっこう多いんです。これは伝わらないだろうとか、子どもの観る映画なら尚更そう。でも、いつも僕はそこに疑問を持ってて。僕なんかの経験でいうと、子どもでも、大人が作ったもの、いろんなことが、わかってると思うんです。理由が残らなかったとしても、何かは残る。それでいいと思っていて。だからクゥも、1回観て『あー面白かった!』っていうだけの作品にはしたくなかった。観た人の心に、どこか傷をつけたかったんです。『覚えとけ、忘れるな!』って。親子愛だの自然を大切にだの、いじめだの、言葉が並ぶとなんだか道徳的だけど、そうじゃなくて、もっと牙をむいて挑むような気分でしたね。なぜかって、僕は、昔の映画にものすごく感動させられてきたんですね。だから、今度は僕がそういうことを伝えなきゃいけないなと。自分がもらったものを、若い人たちに渡したいんです。もちろん、子どもに限らず大人も含めて」
人間も河童も、その種族によって受け継がれていくものがある、と訴える作品。ネイティブアメリカンの思想にも通ずる、後生へと何かを伝え残そうというメッセージは、作品からだけでなく、むしろ原さん自身から発せられているのかもしれない。


