環境都市・東京のneoオリンピック
ワタミグループ代表の渡邉美樹をホストに、さまざまな分野のキーパーソンと語り合う、対談連載オークン・トーク。今回のゲストは、世界陸上で二度メダルを獲得し、〝侍ハードラー〞の異名を持つ、為末大選手。2016 年のオリンピック開催地がリオに決定した翌日、公開対談が行われました。
オリンピックが伝える「世界はひとつ」のメッセージ 渡邉 為末さんには一度、この郁文館の特別授業でお話いただいているんですよね。お世話になりました。 為末 いいえ、こちらこそ。ありがとうございました。 渡邉 さて、オリンピック開催地がブラジルのリオに決定しました。 為末 残念でした。オリンピックはやはり特別なものなので。僕の記憶にある最初のオリンピックは、カール・ルイスが優勝したロサンゼルス大会なんです。「走る」だけで、多くの人を感動させるってすごいなと思って、陸上の世界に入ったんです。 渡邉 私の最初の記憶は、家の前を聖火ランナーが通った5歳のときの東京大会。そのあとはカール・ルイスもそうですし、為末さんもそうですし、人間の限界を超えた極限を見て、感動していました。オリンピックには何回出られているんですか? 為末 シドニー、アテネ、北京と3 回ですね。北京で記憶に残っているのは、選手村です。かなり特殊な場所で、紛争中の国同士の選手が仲良く話をしていたり、みんな背景をあまり気にせずあの中にいる。そんな「常時地球村」みたいな場所が世界のどこかにあってもいいのかなと思うんです。選手の楽園っていうのかな。 渡邉 そういう面からいうと、オリンピックって平和の象徴じゃないですか。「世界はひとつ」ということをみんなで意識できるような場所ですよね。実現していたら、次の次、為末さんが38歳のときに東京オリンピックのはずだったんですね。 為末 そこまで現役だったらすごいですけどね。今回、オリンピック招致を盛り上げる、ふるさと特使に任命していただいたのですが、東京と地方の温度差がかなりあったと思います。スポーツに対して、切実な願いが日本全体にたまっていなかったのかもしれません。ただ、東京のモデルが成功していたら、開催できる国の幅がすごく広がっていたと思う。小さくコンパクトにというコンセプトは、すごく良い方向性だったと思うんです。 渡邉 そうなると選手の負担も軽くなるし。あと東京オリンピックのテーマは「環境」でしたよね。環境にやさしいオリンピックを目指すのは、非常に良いことだと思いましたが。 為末 ええ。ただ、シンプルに言ってしまえば、ブラジルの人々の熱気というかモチベーションが勝ったなっていうのはありました。 渡邉 今は不景気や政権交代のこともあって日本国民の興味や関心が、オリンピックに向かいきれなかったんじゃないかな。次の2020 年は、鳩山政権が掲げる% のCO2削減目標のゴールの年じゃないですか。痛みを背負いながらもその目標を達成して、なおかつこんな素敵な都市をつくったよ、というメッセージを伝えるにはすごくいいと思うんです。そのときには、男子マラソンを広島で、女子マラソンを長崎で、そして東京で他の競技を。これこそ、これから地球がひとつになっていくすばらしいきっかけになるんじゃないかと思います。「平和と環境の祭典」を掲げて、東京オリンピックをやってほしいですね。 為末 死ぬまでには日本で見てみたいですね。選手としてオリンピックに対して思うことは、僕は決勝に一回も残ったことがないんです。世界陸上では、小部屋で向かい合って座っている決勝のレースを待つ8 人が一回も目を合わさないんですよ。あの独特の、何か起きるとぷつんと切れちゃうような緊張感は、オリンピックだったらどうなんだろうと。それを覗いてみたい、一度でいいから決勝の舞台を走ってみたいですね。

