日本一の歓楽街、新宿歌舞伎町の“駆け込み寺”
Guest
玄 秀盛 新宿救護センター 所長
ワタミグループ代表の渡邉美樹をホストに、さまざまな分野のキーパーソンと語り合う対談連載「オークントーク」。今回のゲストは、新宿歌舞伎町で〝現代の駆け込み寺〟「新宿救護センター」を運営する、NPO法人日本ソーシャル・マイノリティ協会の玄秀盛さんです。
〝社会的弱者〟を救うために 民間だからこそできること
玄 ここは、家庭内暴力(DV)、多重債務、ストーカー、家出や自殺などに悩んでいる人の〝駆け込み寺〟ですね。8年前から、いわゆる〝社会的弱者〟が直面するトラブルへのアドバイスや相談を行ってます。 渡邉 私は基本的に、国ができないことをしたいと思っています。それに対して、玄さんは国がすべきことをしていると感じたんです。たとえば、DVや闇金被害などは、警察で対応できそうな気がする。その辺の、行政のセーフティネットはどんな状況なんですか? 玄 家庭の問題を法律が解決することは、なかなか難しいのが現実ですね。たとえば、DVで女性が逃げてきます。確かにDV被害者が法律で守られる部分はありますが、実際にはそれで問題が解決しない場合も多い。法律は、あくまで逃げる側の立場に立ったもので、追う側にしたら、昨日まで話してた人にピシャッと門戸を閉ざされるわけだから、どこまでも捜しにきます。 渡邉 そういう問題を根本的になくすために、本来は行政が本腰を入れて、問題を未然に防ぎながら十分に被害者ケアできる、セーフティネットをつくらなければならないはず。でも、玄さんが抱えているような本当の〝隙間〟は、行政では埋めきれないんでしょうね。 玄 遠いですねぇ。日本の現実は正反対。助成金を申請しようとしても、特にうちみたいな多岐にわたる複雑な活動内容を、お役所仕事は理解しにくいのだと思いますね。 〝NPOの価値を認め、支援できる仕組みづくり
渡邉 どうやって8年間も運営してきたんですか? 玄 活動費は、おもに寄付金と私の講演費と本の印税で賄ってます。うちの場合は、個人に支えてもらってる部分が大きい。ほぼ全スタッフがボランティアで活動してくれているんですが、本当にありがたいことですね。 渡邉 NPOも企業のようにしっかりマネージメントして経営していくことが必要。組織として当然のことなのに、多くのNPOが実行できていない。NPOがもっと力を発揮できる環境を整えていくためには、NPO自身も変わる必要があると実感しています。 玄 確かに、個人だからできる部分は大きいと思います。被害者だけでなく加害者も受け入れるのは、民間だからできることでしょうね。もうひとつ行政にできないことは、「ノー」と言えること。断ることができる。うちにも「泊まらせてほしい」とホームレスが来ます。だけどまずは、「働き口を探そう」と言う。与えて庇護するばかりでは、自立の羽をもぎとってしまいますから。 渡邉 必要なのは「自立を前提としたセーフティネット」なんですよね。〝弱者〟を救済するセーフティネットとして、公の仕組みは絶対に必要。だけど、その仕組みだけで〝弱者〟はいなくならない。世の中には常に〝弱者〟と〝強者〟がいて、失業や病気などのために、誰しも〝弱者〟になりうるわけだから。 玄 その通り。その時はじめて、〝弱者〟はいなくなるんです。
最初は24時間体制だったんですが、NHKに取り上げられたこともあって、全国各地から1週間に100本ぐらい電話が鳴る状態が続いて。さすがに1日2〜3時間しか仮眠できない毎日に限界がきて、12時間体制に切り替えました。
だから、加害者も受け入れて、双方の要望を聞くんです。加害者には、DVの自覚なんてなく、ただの夫婦喧嘩だと思ってる奴も多い。きちんと向き合い、自分の行動をわからせる必要があるんです。両者を受け入れて解決に導かない限り、同じことが続きますから。
それなら行政は、隙間を埋めることができるNPOに役割や予算を分割して、積極的に支援していくべきだと思う。北欧などではそのシステムがしっかり確立しているんですが、日本の現状は、それにはほど遠い……。
もちろん、トップひとりのキャラクターや独自の活動あってこその〝個人商店〟的な体質が合う組織もある。玄さんのところはまさにそれで、その場合〝経営〟は、その行動範囲を狭めるものかもしれない。行政が支援できない、個人商店だからこそ可能な活動が多くの人に必要とされている現状は、現場のニーズをより把握するNPOの価値を認め、支援できるような社会が求められていることの表れ。みんなが不安を抱えながら生きている今こそ、行政やNPO、企業が協力して、社会的弱者にやさしい社会の実現に向け歩き始める時なんだと思います。
多く持つ人が、持たない人に対し責任を感じ、支える。そこで自立した者が、今度は自分が手を差し伸べる。個人がそんな意識を自然と持つことで、適切な行政システムが形づくられ、さらにそのサービスを向上させていく。

